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ソ連映画「ルスランとリュドミラ」
2011-11-27 21:34:17
 10世紀のキエフ公国時代をモチーフにしたプーシキンの長編叙事詩「ルスランとリュドミラ」を読み始めていまして。
 ソ連時代に映画化された作品のDVDも最近購入して観たら、すっかりのめり込んでしまいました。

 Messenger の「ルスラン(ユルスナール)」は、この作品の主人公である騎士「ルスラン」から名前を拝借しました。

 物語は古代ルーシと呼ばれる10世紀半ば、現在のウクライナ(キエフ)周辺にキエフ公国がありまして、そのヴラジーミル公の治世のときのお話です。
 たび重なるチュルク系(トルコ系)騎馬民族との戦で功績を上げた英雄であるルスランが、王のヴラジーミル公より末娘のリュドミラを賜りまして、婚礼の宴が華々しくお城で開かれました。国を挙げてのお祝い。老いも若きも貴賎を問わず人々が城内に集まりどんちゃん騒ぎをします。
 ルスランには三人の恋敵がいたのですが、王は娘をルスランに与えることにしました。
 その夜の初夜の褥の中で、花嫁のリュドミラが、悪の魔法使い「チェルノモール」に攫われてしまいました。そして大事な娘を目の前で攫われたルスランに対し、王は花婿にあるまじき失態と憤り、見事娘を取り戻してくれたものを花婿として迎え、領地の半分を与えると言ったのです。そこで手を挙げたのがルスランと三人の恋敵。こうしてルスランたち四人の個性的な男たちはリュドミラ奪還の旅に出る………というお話です。

 始まり方からしてかなり情けない「ルスラン」。
 ヒーローになり切れていないという点ではMessenger のルスランと相通じるところがあります。本編執筆時は、この作品の内容を知らなかったのですが、奇しくも似た感じになっていて自分でも可笑しくなりました。

 ここでは古代ルーシの伝説やお伽噺のモチーフが魔法使いと魔女というファンタジー要素と絡み合い、実に面白い作品です。原作のプーシキンの詩も美しくロマンチックなのですが、それが映像となると想像以上にコメディー寄りになっていて面白かったです。

 そして、スイッチの入ったままに描いたのが下記の絵です。
 婚礼の宴のシーンから。
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主人公のルスランとリュドミラ。花嫁のリュドミラの頭飾りがとても素敵だったので。銀細工にシードパールがふんだんに使われたと思しきものです。全体が真珠で出来ているようです。ルスランのマントを止める装飾も同じような真珠を使ったものでした。衣装の方も銀糸が織り込まれ、真珠を始めとする宝石が縫い込まれた豪華なものだったのですが、ここではそこまで描きこむ気力がありませんでした。
「ルスラン」の俳優さんは、もっと髭がたっぷりで柔らかくカールした髪だったのですが、Messenger の「ルスラン」風にアレンジしました。リュドミラももっとかわいらしい感じだったのですが、同じくMessenger のリョウを重ねたら、なんだか中途半端な感じに。映画の中のリュドミラはビザンツ帝国の使者も羨むかわいらしさでした。
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同じく、宴のシーンから。これは王の側近と思しき偉い人です。人々に婚礼が開かれることを知らせたり、祝杯の音頭をとったり、ビザンツ帝国からの使者に「王がゲームをしないかと誘っている」と呼びかけたりしました。
 赤い衣装の色もさることながら、古代グラゴール文字のような刺繍の装飾文様に目が釘付けになりまして、割と忠実に描いてみました。正式にはこれに頭の上に毛皮の付いた帽子をかぶっていましたが、宴で祝杯をあげた時にはこんな感じでした。たっぷりとした顎鬚はルーシのマストアイテム。男の象徴です。それにしてもみんな手にしている盃の大きいこと。飲んでいるのは葡萄酒でした。

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同じ宴のシーンで登場した吟遊詩人「バヤーン」。「吟遊詩人」というと個人的なイメージからてっきり若い人を想像していたのですが、ここでは見事な白髪の老人でした。でも素晴らしい歌声を披露しました。この「バヤーン」が弾いているのが「グースリ」です。Messenger 本編でも宴のシーンやお祭りのシーンで登場したものです。
「グースリ」はスラヴ的な古い伝統楽器。
私はずっと「グースリ」をハープのような竪琴かと思っていたのですが、これを観て目からうろこが落ちました。こうやって横に膝の上に乗せて、両手で爪弾くようにして鳴らす琴のようなものだったんです。映画内での音はハープのようでした。

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 そして最後に同じ宴のシーンから。盛り上げ役の道化師「シュート」。Messenger に登場する道化師たち「スカモーロフ」と同じ感じですね。
 「シュート」は、王様お抱えの道化師たちで、ピエロと同じように踊ったり、冗談を言ったり、からかったり。かなりのやりたい放題。ここでも一人の「シュート」が王様の所に行って、背後から盛り上げるように声をかけていました。
 意外に寛容なんですね。まずそれに吃驚。そしてこの「シュート」が手にしていたのがタンバリンで。よく見るとそこにルーシのおっさんの顔がユーモラスに描かれていて、思わず吹き出していました。そしてこれは描かねばと妙な闘志を燃やしてしまったのです。
 宴の中では熊や狼や鳥のお面を被って踊ったり、バク転をしたり。打ち鳴らす楽器は主にタンバリンとたて笛でした。外では熊とレスリングしたりと、いや想像以上に凄いのなんの。古代の「スカモーロフ」たちを描いた教会の壁画などで、熊を飼い馴らして「バラライカ」(ギターのような三角をした弦楽器)を弾かせている絵があったのですが、その一端を垣間見た気分でした。
 この「シュート」は映画の中でも実にいい役どころです。単なるお調子モノではなく、国を裏切って情報を流そうとしたルーシの男の後を追って、一人敵の騎馬民族の陣地に乗り込み、そこでその男に「裏切り者!」と啖呵を切って、一人馬に乗り、敵が攻めてくることを王様に伝えに戻りました。斥候みたいなこともしたのですね。タイプは違いますが、役割的にはMessenger の「ルーク」に近いかもと思ってしまいました。第二章のスフミ村のお祭りではスカモーロフに扮していたので。

 そのほかにも映画内には当時の風俗や衣装が色々と出ていて。お城に集まる人たちの衣服が目にも鮮やかで、当時は想像以上に豪華だったのだと感嘆することしきりでした。ビザンツ帝国からも皇帝からの祝いの品を持った使者が船で訪れまして、贈り物にドーベルマンみたいな大きな犬や白い虎の子供とかを抱えていてビックリ。
 ウラジーミル公はスラヴで初めてキリスト教(東方教会)を受け入れた王様で、立場的にはビザンツの使者の人たちの方が偉いんですね。そのような時代背景や、チュルク系の騎馬民族との戦いとか、当時の戦装束とか。史実的な要素も盛りだくさんで、そういう面から見ても実に興味深かったです。
 暫くは、Messengerそっちのけで、 こちらのイラストを描いてしまいそうな気がします。